皆さん、こんにちは、北京支社の范(ハン)です。今回は、東芝の白物家電事業買収で話題になった、中国の大手家電メーカー「美的」についてお伝えします。
東芝白物家電事業を買収した”美的グループ”とは?
2016年3月30日、東芝は白物家電の製造・販売を手掛ける子会社、東芝ライフスタイルの株式の80.1%を、中国の美的グループに売却することで合意しました。このニュースは、中国の家電業界においても、Haierが54億ドルでGEの家電業務を買収した後に次ぐ、一大事件として注目を集めています。日本では「美的(Media)」というブランドは馴染みがないですが、実は白物家電では世界シェア2位(台数ベース、英調査会社ユーロモニター調べ)の実績を持ち、特に中国では小物家電、キッチン家電分野において、品揃えNo.1を誇る世界的な家電メーカーです。従業員は約108,000人で、美的の家電製品は200以上の国と地域で販売されています。
「美的」の歴史
1968年に創業者の何享健氏が23人を率いて、資本金5,000元で樹脂性のキャップ製作所を設立したのが、「美的」の前身です。
当時作った樹脂製のキャップ |
1980年、改革開放政策の波に乗り、扇風機メーカーとして家電業界に進出。1981年に美的ブランドを立ち上げました。
1976年何享健氏が技術者と 一緒に作った扇風機 |
1980年に作った扇風機 |
1台目の「美的」製品 |
1985年からはエアコン事業にも進出。その後は著しい勢いで成長し、1990年には売上高が1億元を突破。売上高は2000年に100億元、2010年に1000億元、2013年に1210億元、2014年には美的グループトータルで1423億元にまで伸びました。海外への販売実績も498億元を占め、世界で多くの国に認められるグローバル企業に成長しました。
2014年の「中国で最も価値の高いブランド」ランキングで、美的のブランド価値は683.15億元で第5位にランクイン。2015年の『財富』中国Top500ランキングでも、美的グループは家電業界のNo.1の評価を受けました。さらに同年のForbes社の世界企業番付でもTOP500にランクインし、着々と実力を積み重ねてきています。(※美的のHPを参考)
今後も美的は「人々の生活をより快適で幸せに」をミッションに掲げ、幅広い商品ラインを展開していく模様です。
広告におけるイメージ戦略
美的は広告宣伝の巧さでも定評があります・1992年に張芸謀 (チャン・イーモウ)監督の映画に出演し、有名になった女優、巩俐(ゴン・リー)をイメージキャラクターとして起用したことで、エアコンが大ヒットしました。更に20年後、国際的に有名になった彼女を再度イメージキャラクターに起用。これには、グローバルなブランドイメージや商品の高品質、プレミアム感などをPRする意図があるのではないかと思われます。
1992年 |
2012年 |
また、消費者のメインターゲットとなる80年代生まれのお客様に好感を持ってもらうために、「サンザシの木の恋」という映画に出演したドウ・シャオとジョー・ドンユーをイメージキャラクターとして起用しました。
的確なターゲットをつく商品力
美的は商品力も高く、多くの話題に上がり、注目を集めています。
例えば、2014年に世界初となる子供専用のエアコンを販売しました。センサーで室内の温度をコントロールし、子どもが布団を蹴飛ばしたら、エアコンがすぐに適切な温度に調節するという機能で、多くの親御さんから支持を受けています。カラバリも男児向けのブルーと女児向けのピンクの2色で、本体リモコンもデザインが可愛く、お子様にも大変喜ばれているようです。
ちなみに、子供家電として一番最初に販売した製品は洗濯機ですが、実用的とは言えず、あまり普及しませんでした。しかし、2013年に「お父さん、どこへ行こう?」という、お父さんと子供の旅をテーマにした番組が全国で大反響となり、そこからヒントを得たかどうかは定かではありませんが、エアコン業界において子供市場をいち早く開拓しようとしたのは、美的の商品力の強さといえます。
最近では、女性をターゲットにした「美的Lafi洗顔軟水機」が発売されました。水道の蛇口に取り付けるだけで、水道水が肌により優しい弱酸性の軟水に変わります。その水で洗顔することで、肌表面の水分量が20%アップ、スキンケアの吸収効果が55%アップという驚きの効果が得られるそうです。
その他にも、ライフスタイルに強いこだわりがあるお客様には、デザインを自由に変えられるオリジナルの冷蔵庫の注文も行っています。
国際的な公共機関でも活躍!
一般消費者向けの製品以外にも、鉄道交通、工業、通信、教育、医療などB to Cの業界に対しても、ソリューション提案を行っています。美的のセントラル空調がAHRI認定を獲得し、今夏のリオデジャネイロオリンピック関連のすべての施設に、100%美的の空調が使用される予定です。他にもシンガポールの空港や、ヨーロッパユースオリンピックなどの国際的プロジェクトでも美的の商品が活躍しています。
東芝との業務合併については、さまざまな見方がありますが、美的の333戦略の中の「3年間で世界家電業界に一席を取り、グローバル経営を実現する」という目標に向けて確実な一歩を踏み出したと言えるでしょう。新しい挑戦にはリスクも潜んでいるでしょうが、我々の生活をより快適に、より素敵にしてくれることを願いながら心から応援します。頑張れ、美的!頑張れ、中国製造!