はじめに
ルームエアコンは、二人以上の世帯で普及率が9割を超えており、市場のほとんどが買い替えと増設で成り立っています。そのうえで、家電のなかでも季節性が際立って強い商品です。2021年から2025年の5年平均で見ると、出荷が最も多い6月は1,402千台、最も少ない10月は401千台で、3.5倍の開きがあります。つまり単月の出荷台数を前の月と比べても市場の強弱は分かりません。前年の同じ月と比べるか、年度でまとめて見るかのどちらかが必要になります。
長期では、台数・金額・1台あたりの価格が別々の動きをしてきました。年度の出荷台数は増え続け、2020年度に10,097千台の最高を記録しています。一方で出荷金額の最高は1991年度の10,066億円で、その後は台数が増えても金額が減る時期が続き、2006年度には5,302億円まで落ちました。平均単価が1984年度の171,149円から2006年度の71,488円へ、22年で6割近く下がったためです。この関係が変わったのが2010年代後半以降で、単価は反転して2025年度に93,602円まで戻り、金額も9,387億円まで回復しています。台数が伸びなくても金額が伸びる市場に変わってきました。
そして2026年は、その流れが一段強まった年になっています。1月から6月の出荷は6,527千台で、統計を遡れる1972年以降で最も多い上期です。金額も6,155億円で、これまで最高だった1991年の水準を35年ぶりに上回りました。背景には夏の猛暑に加えて、2027年4月に家庭用エアコンの省エネ基準が引き上げられることがあります。現在流通している安価な機種の多くは新しい基準に届いておらず、選べるうちに買っておこうという動きが需要を前に動かしています。基準の切り替わりは2027年4月なので、この影響は年度をまたいで続く可能性があります。
このページでは、出荷台数・出荷金額・平均単価の3つを月別と年度別で切り替えて見られるようにしたうえで、家電量販企業の店頭売上を並べています。読むときに1つ気をつけたいのは、統計が示しているのはメーカーからの出荷であって、店頭で売れた数ではないという点です。両者は同じ方向に動くことも、逆を向くこともあります。ずれた月には流通在庫が動いており、そこに次の月を読む手がかりがあります。
2026年6月の出荷は1,651千台、前年同月比117.5%でした。1月から6月までの累計は6,527千台で、統計が遡れる1972年以降で最も多い上期です。2位の2021年(5,583千台)を944千台上回っています。前年を下回った月は1つもなく、4月129.5%、5月124.3%と2割以上の伸びが続きました。要因は2つ重なっています。5月中旬の記録的な高温と、2027年4月に省エネ基準が引き上げられることを見越した買い替えです。
ただし、このグラフが示しているのはメーカーの出荷であって、店頭で売れた数ではありません。両者は5月と6月で逆を向きました。家電量販各社の5月のエアコン売上は、ケーズHDが2.3倍、エディオンが218.2%と4社そろって2倍を超えています。出荷の124.3%を大きく上回っており、売れた分を手元の在庫で賄っていた、つまり流通在庫の取り崩しが進んでいたと考えるのが自然です。6月は関係が反転します。店頭は65.8〜88.6%と4社すべてが前年を下回った一方で、出荷は117.5%と伸び続けました。5月に需要が前倒しされた反動で店頭が落ちるなかで出荷が積まれた形で、6月は在庫が増えた月とみられます。
2027年問題と呼ばれている変更の中身は、家庭用エアコンの省エネ基準が2027年4月に厳しくなることです。トップランナー制度はメーカーが年度ごとに出荷する製品全体の平均で基準を満たすことを求める仕組みで、現在流通している最安からスタンダードの機種の多くは新基準に届いていません。安い機種が選びにくくなる前に買っておこうという動きが、上期の伸びの一部を作っています。裏を返せば、その分は将来の需要を先に取り込んでいるということでもあります。
表示単位を年度別に切り替えると、この上期の位置づけが見えます。前年度にあたる2025年度は10,029千台で、過去最高の2020年度(10,097千台)に迫る水準でした。高い年度の翌年にさらに2割以上積み増しているのが2026年度で、4月から6月の3ヶ月で3,980千台、前年同期比122.6%です。7月中旬から下旬は西日本の平均気温が1946年以降で最も高くなり、店頭も135.8〜154.9%と回復しました。積み増した在庫が動いたかどうかは、7月分の出荷が公表された時点で確かめられます。


