はじめに
パソコンの国内出荷は、この6年で大きく振れています。2020年度は小中学校に1人1台の端末を配るGIGAスクール構想が本格化し、出荷台数は12,083千台と2010年度以降で2番目に多い水準まで膨らみました。ただし学習用の安価な端末が大量に含まれたため、1台あたりの平均単価は73,343円まで下がっています。台数が伸びた年が単価の高い年とは限らないのが、この市場の特徴です。
特需が引いたあとは反動が続き、2023年度の出荷台数は6,682千台まで縮みました。2020年度からの3年でおよそ45%減です。
流れが変わったのは2025年度です。2025年10月14日にWindows 10のサポートが終了し、買い替えが動きました。あわせてGIGAスクール構想の第2期にあたる端末の更新も始まり、2025年度の出荷台数は10,913千台(前年度比31.4%増)、出荷金額は1兆1,684億円(同20.7%増)と、5年ぶりに1,000万台を超えています。
2026年度に入ると、この2つの需要はいずれも前年を下回りました。第1四半期の出荷台数は2,023千台で前年同期の76.9%です。一方で出荷金額は2,672億円・95.3%と、台数ほどは減っていません。安価な学習用端末が抜けたことに加えて、2025年末から続くメモリとSSDの価格高騰を受け、パソコン本体の値上げが相次いでいるためです。生成AI向けのデータセンター需要が半導体の供給を吸い上げ、パソコン向けに回る分が絞られています。AI対応パソコンの普及でメモリやストレージの容量そのものが底上げされていることも、価格を押し上げる方向に働いています。
このページでは、出荷台数と出荷金額、平均単価、種類別の内訳という3つの角度からパソコン国内出荷の動きを追います。数値は電子情報技術産業協会(JEITA)の公表値です。平均単価のみ、公表されている出荷金額と出荷台数をもとに弊社で算出しています。
2026年度第1四半期の出荷台数は2,023千台で、前年同期の76.9%にとどまりました。6月は962千台・67.7%と、この四半期でもっとも深い前年割れです。ただしこれを需要が急に冷え込んだと読むのは早すぎます。比較先の2025年6月が1,422千台・前年比237.3%と、2010年度以降の月次で最も高い伸び率だったためです。2年前の2024年6月と比べると、962千台は160.6%でむしろ大きく上回っています。第1四半期でも2,023千台は2024年度の1,609千台に対して125.7%です。JEITA自身も第1四半期の総括で、前年度は下回ったものの2024年度と比べれば台数・金額とも大きく上回ったと述べています。
金額の動き方は台数と違います。第1四半期の出荷金額は2,672億円で前年同期の95.3%、6月は1,203億円・92.1%です。台数が23.1%減っているのに、金額は4.7%しか減っていません。2024年度第1四半期の1,938億円と比べれば137.9%で、台数の125.7%を上回る伸びです。出荷される1台あたりの価格帯が上がっていることを示しており、その中身は次の平均単価のグラフで確かめます。
台数が落ちた理由は、前年の特需が引いたことだけではありません。2025年末からメモリ価格が高騰し、パソコンの店頭価格が上がっています。VAIOは2026年4月23日から個人向け・法人向けの出荷価格を改定し、マウスコンピューターも2026年1月以降に順次値上げを実施しました。メーカーの価格改定が相次いでいます。価格が上がれば買い替えは先送りされます。MM総研は2026年度の国内出荷を前年度比37.8%減の1,123万台と予測しており、その理由としてWindowsの更新とGIGAスクール端末の更新需要が2025年度にピークを迎えた反動に加えて、メモリ価格高騰による値上げを挙げています。なおMM総研の集計はJEITAとは対象範囲が違うため台数の水準は比べられませんが、下向きという方向は一致しています。
店頭の動きも見ておきます。家電量販各社のパソコン売上(金額ベース・IR月次より)は、2025年9月にJoshinが286.2%、エディオンが226.9%、ケーズHDが218.2%と跳ね上がったあと、2026年2月以降は勢いを失いました。コジマの3月100.2%・4月100.4%を除けば、各社とも前年割れが続いています。2026年6月はエディオン76.4%、Joshin80.3%、ケーズHD92.9%、コジマ96.7%です。出荷金額の92.1%と方向が一致しており、メーカー出荷だけが先に落ちて流通在庫が積み上がっている状況ではなさそうです。
先行きの分かれ目は9月から10月です。Windows 10のサポートが終了した2025年10月14日に向けて、前年のこの時期は出荷も店頭も突出しました。2025年度は9月が1,445千台・186.4%、10月が803千台・130.2%です。2026年の同じ月はこの高い水準と比べられるため、前年比は大きく沈む可能性があります。実勢を捉えるには、前年比だけでなく2024年度との比較を併せて見る必要があります。あわせて注意したいのが値上げの効き方です。部材価格の上昇は当面続くとみられており、台数の戻りが鈍いまま金額だけが保たれる状態が長引くかどうかが、この市場の当面の焦点になります。


