はじめに
薄型テレビは、二人以上の世帯の94.1%が保有し、100世帯あたりの保有台数は194.7台に達しています(内閣府「消費動向調査」2026年3月末)。すでに行き渡った市場であり、いま動いているのは買い替え需要です。買い替えまでの平均使用年数は10.8年、買い替えの理由は70.8%が故障で、上位機種への移行は17.1%にとどまります。壊れるまで使われる商品であるため、需要の総量は世帯数と製品寿命でおおよそ決まります。
国内出荷が突出したのは2010年です。地上アナログ停波を控えた買い替えとエコポイント制度が重なり、約2,500万台が出荷されました。それまでは年間700〜800万台の市場だったため、3年分以上の需要が数年に前倒しされたことになります。その反動で2012年以降は縮小が続き、2017年に底を打った後、在宅時間の増加を背景に2020年は5,426千台(前年比111.5%)まで戻りました。ただしこの水準は続かず、2022年4,866千台、2023年4,373千台と下がり、2024年4,486千台、2025年4,399千台(前年比98.1%)と、直近は4,400千台前後で推移しています。
台数が伸びない一方で、中身は変わり続けています。2026年上期に前年を上回ったサイズは60型以上(前年比106.1%)だけで、40〜49型は91.7%でした。大画面への移行は今も進んでいます。4K対応テレビは2020年の3,054千台をピークにいったん減少しましたが、2024年を底に2025年は2,429千台(前年比104.3%)と再び増加し、2026年6月時点で薄型テレビの台数の50.6%を占めます。金額で見ると比率はさらに高く、同月の出荷金額415億円のうち4Kは345億円で、83.3%を占めました。台数の半分が金額の8割を生んでいる計算です。
薄型テレビの月別出荷台数・前年比の推移
2026年上期で最も目を引くのは、5月の280千台・前年比85.4%です。期間を切り替えて2018年まで遡っても、これほど少ない5月はありません。4月の308千台とあわせ2ヶ月続けて大きく沈んでおり、ここだけを見ると需要が急速に冷え込んだように映ります。ところが店頭の動きは逆でした。家電量販各社の5月のテレビ売上は、ビックカメラの音響映像商品が121.3%、エディオンが118.2%、ケーズHDが116.7%、Joshinが113.0%、コジマが104.1%と、5社そろって前年を上回っています。
このグラフが示しているのはメーカーの出荷であって、店頭で売れた数ではありません。店頭が伸びる一方で出荷が85.4%まで落ちたということは、売れた分を新たな出荷ではなく手元の在庫で賄っていた、つまり流通在庫の取り崩しが進んでいたと考えるのが自然です。6月に406千台・102.9%と反転したのは、減った在庫を補う動きが出たためとみられます。5月から6月への126千台の増加は上期で最大でした。6月11日開幕のワールドカップも需要を押し上げた要因の一つで、前回6〜7月に開催された2018年も、出荷は6月117.9%・7月113.3%と大会期間中に伸びています。
上期を通して見ると、2026年は月ごとの振れが大きい年です。前年比の最高は1月の104.8%、最低は5月の85.4%で、その差は19.4ポイントに達します。2022年以降では最も大きな振れ幅です。一方で前年を下回った月は3・4・5月の3ヶ月で、4ヶ月が前年割れだった2025年より少なくなっています。落ち込んだ月の下げが深い反面、戻るときの戻りも大きい、というのが2026年上期の姿です。単月の前年比だけを追うと実態を見誤りやすい局面といえます。
下期を見るうえでは、まず7月です。量販各社の7月のテレビ売上はビックカメラ113.5%、ケーズHD108.7%、Joshin106.1%、エディオン104.8%と好調を保っており、店頭の勢いが続いている以上、出荷側も伸びる可能性があります。あわせて注意したいのが、補充が一巡した後の8月以降です。期間を過去の年に切り替えると分かるとおり、テレビ出荷の山は11月・12月にあり、2025年は431千台・527千台、2024年は424千台・518千台と年末に集中しています。ここに向けて在庫をどう積むかで、秋口の出荷は大きく振れます。年末商戦の準備が始まる9月・10月の数字が、2026年の着地を占う手がかりになりそうです。


