投稿日:2026年9月17日 著者:得平 司

業界分析

家電業界で再編の動きは今後も起きるのか?

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家電業界で再編の動きは今後も起きるのか?

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家電業界で再編の動きは今後も起きるのか?

2026年6月5日、ヤマダホールディングス(以下、ヤマダHD)とエディオンは、2027年10月1日を目途に共同持株会社を設立し、経営統合することで基本合意したと発表した。両社の2026年3月期の売上高を単純に合算すると約2兆5,000億円。今期の各社の予想で比べると、2位のビックカメラの約2.6倍の売上を持つ企業が誕生することになる。

ヤマダHDとエディオンが統合した場合の業績予想(2026年度)

  • 前年比120%以上
  • 110%以上120%未満
  • 100%以上110%未満
  • 100%未満
売上売上総利益営業利益経常利益
金額前年比金額前年比売上比金額前年比売上比金額前年比売上比
1位統合会社ヤマダHD+エディオン2,596,000104.4%738,900110.4%28.5%78,500187.1%3.0%79,600170.7%3.1%
2位ビックカメラ2025年9月〜2026年8月1,013,000104.0%271,484104.2%26.8%30,500100.7%3.0%31,50098.7%3.1%
3位ノジマ売上総利益のみ推定1,000,000101.7%284,000101.7%28.4%59,000101.6%5.9%76,000122.0%7.6%
4位ヨドバシカメラ池袋店の6月30日開業を織り込んで試算931,500105.7%273,800105.7%29.4%76,300105.7%8.2%77,300105.7%8.3%
5位ケーズHD785,000103.3%219,500104.4%28.0%30,500113.8%3.9%33,500109.6%4.3%
6位Joshin(上新電機)438,000100.3%114,500106.2%26.1%6,000110.7%1.4%5,500107.6%1.3%
  • 金額の単位は百万円。統合会社はヤマダHDとエディオンの2027年3月期の会社予想の単純合算で、前年比は2026年3月期実績の合算との比較。
  • ビックカメラは2026年8月期(2025年9月〜2026年8月)の会社予想。ヨドバシカメラは非上場のため当社試算。
  • 統合会社の営業利益の前年比が大きいのは、ヤマダHDの2026年3月期の営業利益が、在庫処分などで前期比62.2%減だった反動によるところが大きい。
  • 順位は今期の予想売上の順。実績では、ノジマの2026年3月期(9,828億円)が、ビックカメラの2025年8月期(9,745億円)を上回っており、2位と3位の差はわずかである。
  • 出典:各社発表数字(ノジマの売上総利益とヨドバシカメラはクロス予測)

発表後、業界では次の再編がどの企業同士になるのか、さまざまな観測が出た。では、ヤマダHDとエディオンのような再編は今後も起きるのか。本稿では、再編が起きる代表的な5つの要因ごとに、過去の事例といまの家電量販業界を照らし合わせる。

1. 救済的再編

救済的再編とは、ある家電量販企業の業績が低下して存続が危うくなったときに、他の企業が救済のために子会社化などを行うものである。代表的な例は、2012年のビックカメラによるコジマの子会社化と、同じく2012年のヤマダ電機(当時)によるベスト電器の子会社化である。

救済的再編は、企業の業績が低下し、財務内容が毀損したときに起きる。メインバンクが、業績が低下した企業への債権を保全するために、再編に動くこともある。救済する側は売上を拡大できるうえ、救済される企業の経営資源を活用できる。救済する側にある程度の資金的余裕があり、大きなメリットが見込める場合に行われる。

当社分析

現在、主要な家電量販企業の中に、財務内容が毀損し存続が厳しくなるような企業は見当たらない。各社とも財務面の安全性を確保しており、救済的再編は起こりにくい。

2. 防衛的再編

防衛的再編は、競合する企業が自社の商圏内に積極的に出店し、既存店舗が大きな影響を受ける局面で起きやすい。

2000年代には、ヤマダ電機(当時)、コジマ、ケーズデンキが全国に多くの店舗を出店し、地域の家電量販企業は大きな影響を受けた。これに対応するため、2002年に広島を本拠地とするデオデオと、名古屋を本拠地とするエイデンが、共同持株会社エディオンを設立して統合し、ヤマダ電機(当時)やケーズデンキへの対抗に備えた。

いまの家電量販店はオーバーストア状態にあり、2000年代のように年間40〜50店舗(当社試算)という規模で積極出店する企業はない。家電量販8社の家電量販店の直営店を2024年と2026年で比べると、合計は2,631店から2,605店へ26店(1.0%)減った。店舗を増やしたのはノジマ(221店→240店)、Joshin(218店→222店)、ビックカメラ(43店→46店)、ヨドバシカメラ(23店→24店)の4社で、最も多いノジマでも2年で19店、年10店ほどである。一方、ヤマダHD(975店→926店)は2年5か月で49店減った。

家電量販8社の店舗数(家電量販店の直営店)
2026年(原則8月末) 2024年(原則3月末) 0 250 500 750 1,000 ヤマダHD 975店 → 926店(-49) ケーズHD 556店 → 556店(±0) エディオン 454店 → 453店(-1) ノジマ 2024/3→2026/3 221店 → 240店(+19) Joshin 218店 → 222店(+4) コジマ 141店 → 138店(-3) ビックカメラ 2024/8→2026/8 43店 → 46店(+3) ヨドバシカメラ 2024/4→2026/8 23店 → 24店(+1)

8社合計は2,631店から2,605店へ26店(1.0%)減。ヤマダHD・エディオン・ケーズHD・Joshin・コジマは各社IRの月次開示の月末店舗数(家電データベース)で、2024年3月末と2026年8月末。エディオンは直営店だけ(フランチャイズ店を除く)。ヤマダHDの月次店舗数は2023年4月分からのため、2024年3月末と比べた。ビックカメラは単体の店舗(Air BicCamera・酒販店・ソフマップ・コジマを除く)で、2024年8月末は有価証券報告書、2026年8月末は2026年5月末の決算資料の45店に8月29日開店の浦和西口店を加えた数。ノジマはデジタル家電専門店の直営店(キャリアショップを除く)で、各年3月期の決算短信。2026年6月末は244店(通信専門店を含む可能性がある)。ヨドバシカメラは非上場のため、公式の店舗一覧(2024年4月1日時点の保存版と2026年9月の一覧。アウトレットとスポーツ店を除く)を数えた。

当社分析

出店を続けるノジマでも年10店ほどで、2000年代の規模には及ばない。競合の積極出店に備える必要が小さい以上、防衛的再編はあまり考えられない。

3. 補完的再編

補完的再編とは、互いの企業の強い部分を補い合うことで、付加価値の高い企業をつくるものである。たとえば、インターネット販売に強い企業と店舗販売に強い企業が一緒になれば、OMO(オンラインとオフラインの統合)に強い企業ができる可能性がある。商圏の異なる企業同士が統合し、商圏を広げるケースもある。

ただし家電量販企業の場合、売上の中心は店舗販売であり、販売手法やオペレーションに大きな差はない。

ヨドバシカメラやビックカメラのようなターミナル型立地の企業と、郊外型の企業との再編は、ある程度考えられる。しかしヨドバシカメラは、都市の再開発に合わせて店舗を開発する方針を変えていない。ビックカメラは子会社にコジマがあり、郊外の商圏には自社グループの出店で対応できる。

もともと西日本に強いエディオンと、東日本に強いケーズHDは、商圏が補い合う関係にあり、再編の候補としてしばしば指摘されてきた。しかし今回、ヤマダHDとエディオンが統合に向けて動き出したことで、この組み合わせによる再編の可能性は事実上なくなった。

なお、ヤマダHDとエディオンの発表資料も、両社が「相互に補完する」ことでシナジーを追求すると説明している。ただしその中身は、顧客基盤の相互活用や、エディオンが強みとするリフォーム事業などである。本稿でいう、販売手法や商圏を補い合う補完とは性格が異なるため、5の発展的再編に近いものとして扱う。

当社分析

有力な組み合わせがなくなり、販売手法の差も小さいことから、補完的再編も現在は起きにくい。

4. 時代対応投資再編

時代対応投資再編とは、時代の変化に対応するために多額の投資が必要なときに起きる再編である。業界は異なるが、自動車業界では、EVやソフトウェアへの投資負担を背景に、日産自動車とホンダが経営統合を協議した(2024年12月に協議を開始し、2025年2月に打ち切り)。銀行業界では、1999年に経営統合を発表した第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行(現在のみずほフィナンシャルグループ)が、統合の目的の一つに戦略的なIT投資の強化を掲げていた。

一方、家電量販業界では、いまのところ大きな時代対応投資は見当たらない。たとえば、家電量販企業が導入を進めている電子棚札は、数十億円程度の投資である(当社試算)。AIへの投資も、数十億円あれば対応できると考えられる(当社試算)。

当社分析

必要な投資は各社が自社で対応できる範囲にあり、再編を促すような時代対応投資は、家電量販業界ではいまのところ考えにくい。

5. 発展的再編

発展的再編とは、再編によって新たな発展を目指すものである。今回のヤマダHDとエディオンの統合は、発展的再編に近い。両社が発表した統合の狙いには、次のようなものが挙げられている。

  • 規模を活かした共同仕入れなどによるコスト低減
  • PB(プライベートブランド)商品の開発・拡大
  • リフォームの量販化
  • 「くらし」を軸にした事業領域の拡大(ヤマダHDの「くらしまるごと」戦略)

ただし具体策は今後両社で協議するとしており、統合後に家電市場に対してどのような戦略を打ち出すかは、まだ明確になっていない。両社とも、売上高に占める販売費及び一般管理費の割合(販管費率)が高いという課題がある。直近の通期決算では、販管費率はエディオンが25.4%、ヤマダHDが25.1%で、比べた7社の中で上位2社である。ただし最も低いノジマ(22.5%)との差は3ポイントほどで、ヤマダHDには住建などの家電以外の事業も含まれる。

家電量販各社の販管費率(直近の通期決算)
0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% エディオン(2026年3月期) 25.4% ヤマダHD(2026年3月期) 25.1% コジマ(2025年8月期・単体) 24.6% ケーズHD(2026年3月期) 24.1% ビックカメラ(2025年8月期) 23.6% Joshin(2026年3月期) 23.4% ノジマ(2026年3月期) 22.5%

販管費率=販売費及び一般管理費÷売上高。各社の決算短信から当社計算。決算期が異なる。ヤマダHDは住建・金融・環境などのセグメントを、ノジマは通信キャリアショップやインターネット事業などを含む連結の数字で、家電販売だけの比率ではない。コジマは連結決算がないため単体。ヨドバシカメラは非上場のため含めていない。

一方、業界には「統合しなくても、提携で発展できるのではないか」という意見もある。業界は異なるが、全国の有力チェーンストア18社と3つの生協が加盟する日本流通産業(ニチリウグループ)では、加盟企業が共同で仕入れを行い、PB商品「くらしモア」も開発している。

当社分析

両社は、PB商品の売上拡大による粗利率の改善や、広告費・人件費といったコストの削減によって、収益の改善を図るとみられる。ただし、仕入れやPB商品、広告、販促といった分野は、提携によっても十分に実現できる部分がある。

まとめ

再編の5つの要因と、いまの家電量販業界

起きる条件過去の例いまの家電量販業界
救済的再編業績が悪化し、存続が危うくなる2012年 ビックカメラがコジマを、ヤマダ電機(当時)がベスト電器を子会社化財務内容が毀損した主要企業は見当たらない
防衛的再編競合が自社の商圏に積極出店する2002年 デオデオとエイデンが統合し、エディオンが発足店舗数は横ばいから微減。積極出店する企業がない
補完的再編立地・商圏・販路を補い合えるエディオンとケーズHDが候補とされてきた有力な組み合わせがなくなり、販売手法の差も小さい
時代対応投資再編1社では負えない投資が必要になる他業界では、日産自動車とホンダの統合協議、みずほの3行統合電子棚札やAIへの投資は自社で対応できる規模(当社試算)
発展的再編統合で新たな成長を目指す2026年 ヤマダHDとエディオンが経営統合で基本合意PB開発や共同仕入れ、販促は提携でも実現できる部分が多い

救済的・防衛的・補完的・時代対応投資の4つの要因は、いまの家電量販業界には見当たらない。残る発展的再編には今回のヤマダHDとエディオンの統合が当てはまるが、その狙いのうち、PB商品の開発や共同仕入れ、広告・販促といった部分は、ニチリウグループのように提携でも実現できる。統合という大きな決断をしなくても、得られる効果は少なくない。こうした点を踏まえると、ヤマダHDとエディオンの統合に続くような再編は、今後は起きにくいと考えるのが妥当である。

では、他業界との再編はどうか。業界の枠を超えた再編の可能性については、改めて検討する必要がある。

注記と出所