投稿日:2026年9月15日

長期データで見る家電市場

Windows 10サポート終了で伸びたパソコン販売、反動はいつまで続くのか

長期データで見る家電市場

Windows 10サポート終了で伸びたパソコン販売、反動はいつまで続くのか

2025年10月14日のWindows 10サポート終了から、まもなく1年を迎える。期限に間に合わせようとする買い替え(駆け込み需要)は終わり、家電量販店のパソコン売上高は、前年同月比で2025年9月の222.7%から、2026年8月は65.1%まで下がった(いずれも開示4社の単純平均)。

では、反動はいつまで続くのか。前年同月比は、駆け込みで膨らんだ前年と比べた数字なので、落ち込みが大きく見える。本稿では駆け込み前の2024年と比べ直し、いまの売上がどの水準にあるのかを確かめる。

1. 家電量販店のパソコン売上は、2025年9〜10月に最も伸びた

3つの視点で見る。①メーカーの出荷金額(JEITA)、②家電量販市場の販売額(商業動態統計「情報家電」)、③上場4社の店頭のパソコン売上高(各社の月次開示)である。3つとも金額の前年同月比で比べる。

この記事の3つの視点

出荷
メーカーが国内に供給した分の出荷金額
JEITA「パーソナルコンピュータ国内出荷実績」。法人・学校向けを含む
市場
全国の家電量販店(2,643店・2026年7月)が、お客様に販売した分の販売額
経済産業省「商業動態統計」の情報家電。パソコンのほか、タブレット・家庭用ゲーム機本体・プリンタなどの周辺機器も含む
店頭
家電量販の上場4社の、パソコンの売上高
ケーズHD・エディオン・コジマ・Joshin のIR月次速報。各社の規模を反映しない単純平均

なぜ3つを並べるのか。①は法人・学校向けを含む出荷、②はパソコン以外も含む家電量販店の販売、③は上場4社のパソコンの売上である。3つの動きの時期と大きさを比べると、どこで誰が買ったのかの手がかりになる。①は全チャネル向けの出荷、②③は家電量販店での販売なので、比べるのは動きの向きと大きさとし、3つとも金額でそろえた。

パソコンの前年同月比(金額・2025年1月〜2026年8月・%)
①出荷 金額(JEITA) ②市場 販売額(商業動態統計) ③店頭 売上高(開示4社の単純平均) 50 150 200 250 Windows 10サポート終了 2025年10月14日 100% 82.2% 88.9% 65.1% 193.2% 141.8% 157.9% 222.7% 209.9% 118.9% 2025年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2026年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月

すべて金額の前年同月比。①メーカーの出荷金額(JEITA)、②家電量販市場の販売額(商業動態統計の情報家電)、③店頭の売上高(開示4社の単純平均)。赤い横線が前年と同じ水準(100%)、赤い縦の点線がWindows 10のサポート終了の月。最も高い月は、③売上高が2025年9月、②販売額が10月、①出荷金額が6月。

③店頭の売上高は、2025年9月に222.7%、10月に209.9%だった(開示4社の単純平均)。4社で最も伸びた月は9月と10月に分かれ、エディオン(226.9%)とJoshin(286.2%)は9月、ケーズHD(254.1%)とコジマ(172.3%)は10月である。②市場の販売額は10月の141.8%、①出荷金額は6月の193.2%が最も高い。

結果

家電量販店の②販売額と③売上高は、Windows 10のサポート終了の直前と当月にあたる2025年9〜10月に最も伸びた。①出荷金額だけは、それより早い6月が最も高い。

当社分析

①の6月について、JEITAは法人向け・個人向けともに好調とし、特にGIGAスクール向けPCの増加でモバイルノートの台数が前年比350.4%になったと説明している。学校向け端末の出荷が、①を早い時期に押し上げた主な要因の一つとみられる。家電量販店の②③が最も伸びたのは期限直前の9〜10月で、個人のお客様の買い替えが中心だったとみられる。②の伸び率が③より小さいのは、情報家電にパソコン以外(タブレット、家庭用ゲーム機本体、プリンタなどの周辺機器)が含まれることが一因とみられる。ただし周辺機器を除いた情報家電本体でも9月163.5%、10月171.7%と③を下回っており、差のすべてが品目の違いによるものではない。

2. 前年同月比では大きく下がったが、2024年と比べると同じ水準に戻った段階

2026年に入ると、③店頭の売上高は2月から前年を下回り、8月は65.1%だった。②市場の販売額も、2月・6月・7月に前年を下回っている。ただし前年同月比は、駆け込みで膨らんだ2025年と比べた数字である。駆け込み前の2024年の同じ月と比べる(2年前比)と、見え方が変わる。

2024年の同じ月と比べたパソコンの販売水準(2年前比・金額・%)
②市場 販売額 ③店頭 売上高(開示4社の単純平均) 90 110 120 130 100% 99.9% 101.7% 119.5% 96.9% 125.5% 95.6% 2026年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月

赤い横線が2024年と同じ水準(100%)。②は販売額を2024年の同じ月で割った値(2026年7月は速報)。③は社ごとに2026年と2025年の前年同月比を掛けて2024年同月比を出し、4社で単純平均した。

結果

③店頭の売上高を2024年の同じ月と比べると、2026年8月は101.7%(開示4社の単純平均。4社は97.6〜105.5%)で、前年同月比の65.1%とは大きく違う。②市場の販売額も、2026年7月は2024年の99.9%である。

台数と金額に分けると、落ち込みの中身がはっきりする。台数と金額の両方が分かるのは①出荷だけなので、①で分ける。平均単価は出荷金額を出荷台数で割った値である。

①出荷台数平均単価金額
2026年1〜7月(前年比)83.3%114.0%94.9%
2026年1〜7月(2年前比)123.3%108.2%133.4%
2026年7月(2年前比)81.9%143.8%117.7%

2026年1〜7月は、前年より台数が減った一方、平均単価が上がったため、金額の減り方は小さい。7月は台数が駆け込み前の2024年も下回ったが、平均単価が約1.4倍に上がり、金額は2024年を上回った。1〜7月の合計では、学校向けの出荷が多かった6月を含むため、台数も2024年を上回っている。家電量販店の②③は台数を公表していないため同じようには分けられないが、出荷と同じく、平均単価の上昇が売上高を支えている可能性がある。

当社分析

前年同月比の大きな落ち込みの多くは、比較対象の2025年が駆け込みで膨らんでいたためとみられる。③の2年前比は、1〜5月はいずれも2024年を上回り、6月は96.9%、7月は98.8%、8月は101.7%と、2024年とほぼ同じ水準まで下がってきた。反動の深さを見るには、ここから2024年の水準を下回る月が続くかどうかを確かめる必要がある。

①出荷は法人・学校向けを含むため、金額の水準は家電量販店の②③より高く出ている。

3. XPとWindows 7のサポート終了前後、情報家電の販売額はどう動いたか

家電量販市場の情報家電 年間販売額(億円)と前年比
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 (億円) 11,321 2014 9,339 2015 -17.5% 8,769 2016 -6.1% 9,583 2017 +9.3% 9,472 2018 -1.2% 9,876 2019 +4.3% 11,118 2020 +12.6% 10,528 2021 -5.3% 10,338 2022 -1.8% 9,867 2023 -4.6% 9,472 2024 -4.0% 10,790 2025 +13.9% Windows XP終了(4月) 消費税8%(4月) 消費税10%(10月) Windows 7終了(1月) コロナ/GIGAスクール Windows 10終了(10月) 前年比

経済産業省「商業動態統計」家電大型専門店。濃い棒と赤い字はWindowsのサポート終了があった年、グレーの字はその他の出来事。前年比は棒の下に示した(マイナスは赤)。2026年は6月までしか確報が出ていないため入れていない。

結果

情報家電の販売額が前年から10%以上伸びたのは、伸び率を出せる2015〜2025年の11年で、2020年(+12.6%)と2025年(+13.9%)の2回である。XPのサポート終了があった2014年は前年のデータがなく、伸び率を出せない。

2019〜2020年の情報家電の販売額(前年同月比・%)
②市場 情報家電の販売額 60 80 120 140 160 消費税10%(2019年10月) Windows 7終了(2020年1月14日) 100% 100.4% 152.8% 116.4% 140.9% 76.1% 2019年1月 4月 7月 10月 2020年1月 4月 7月 10月

経済産業省「商業動態統計」家電大型専門店。2019年9月は消費税10%への引き上げ前の駆け込み。Windows 7の買い替えは主にサポート終了(2020年1月)までに進み、2020年4〜8月は在宅勤務やオンライン授業のためのパソコン・周辺機器の需要が上乗せされた(各社の有価証券報告書)。

当社分析

過去2回のサポート終了の前後には、どちらも別の大きな出来事が重なっていた。

  • XPのとき:2014年3月の販売額は1,757億円で、翌2015年3月(971億円)の1.8倍だった。この比較には、消費税8%への引き上げ(2014年4月1日)前の駆け込みと、翌年の反動の両方が含まれる。販売額は2015年に−17.5%、2016年に−6.1%と、2年続けて減った。
  • Windows 7のとき:2020年の伸びは、Windows 7のサポート終了による買い替えに、コロナによる在宅での需要が大きく上乗せされたものとみられる。流れを順に追う。
    • まず、Windows 7の買い替えは終了前に進んでいた。サポート終了は2020年1月14日で、ケーズHDは2020年3月期(2019年4月〜2020年3月)について「2020年1月のWindows7サポート終了に伴う買い替え需要が発生」と説明している。ヤマダHDも2021年3月期の資料で、パソコンは「前年のOS(Windows7)サポート終了に伴う買い替え需要が大きかった」としている。情報家電の販売額は、2020年1月に前年同月比116.4%だった。ただし2019年9月は消費税10%への引き上げ前の駆け込みで152.8%、10月以降はその反動が出ており、月ごとの数字からWindows 7の分だけを取り出すのは難しい。
    • 次に、コロナで家で仕事や授業を受ける人が一気に増えた。2020年2月28日には文部科学省が全国の小中高校などに一斉臨時休業を求め、企業では在宅勤務が広がった。家で使うためのパソコンに加え、モニター・Webカメラ・プリンタといった周辺機器を買う動きが広がった。ケーズHDは2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)について「テレワーク、大学などでのオンライン授業が普及したことにより、パソコンおよびPCモニター、Webカメラ、プリンタなどの周辺機器が非常に好調」と説明しており、パソコン・情報機器の売上高は前期比116.9%、パソコン周辺機器は113.0%だった。ビックカメラも2020年8月期に、Windows 7のサポート終了に伴う駆け込みとテレワークの需要で、パソコンと周辺機器が好調だったとしている。
    • さらに、1人10万円の特別定額給付金が買い替えを後押しした。ケーズHDとヤマダHDは、給付金が家電の買い替えを後押ししたと説明している。
    • 統計にもこの時期に表れている。2020年に増えた1,242億円のうち77%(954億円)は4〜8月だった。情報家電にはモニターやプリンタなどの周辺機器も含まれるため、在宅向けの周辺機器の伸びもこの数字に入っている。販売額は2021年から4年続けて減り、2024年は9,472億円だった。2025年は、Windows 10のサポート終了で再び増えている。

過去2回とも、サポート終了のあと販売額は数年にわたって減った(XPは2年、Windows 7は4年)。重なった出来事の影響を差し引いて見る必要はあるが、今回の反動がどれくらい続くかを考えるうえでの目安になる。

4. 数字を読むときの3つの注意:ゲーム機、学校向け端末、単価

  • ②市場の「情報家電」にはゲーム機が含まれる。Nintendo Switch 2は2025年6月5日に発売された。②の2026年6月の落ち込み(79.3%)には、前年のゲーム機の発売も影響しているとみられる。パソコンの動きは③で見るのが確かである。
  • ①出荷には学校向け端末が含まれる。JEITAは、2025年6月の出荷の伸びにGIGAスクール向けPCの増加が効いたと説明している。学校向けは自治体がまとめて調達するため、家電量販店の動きは②③で追う。
  • 平均単価の上昇には、前年の学校向けの影響も含まれる。2025年6月は安い学校向け端末が多く出た。6月を除いて比べても、2026年1〜7月の平均単価は前年より8.6%高い。
パソコンの国内出荷台数と平均単価(JEITA)
0 500 1,000 1,500 台数(千台) 平均単価(円) 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 2024年1月 3月 5月 7月 9月 11月 2025年1月 3月 5月 7月 9月 11月 2026年1月 3月 5月 7月

棒が出荷台数(千台)、線が出荷金額を台数で割った平均単価(円)。2025年6月は学校向け端末(GIGAスクール第2期)の増加で、平均単価が9万円台前半まで下がった。

5. 反動の深さを見極める3つの注目点:2年前との比較、学校向け端末、次の買い替え

反動がどこまで続くかは、次の3つを毎月追うと見えてくる。

注目点 1
③店頭の売上高が、2024年の水準を下回るか
2024年の同じ月と比べた水準(開示4社の単純平均・%)
100% 119.5% 101.7% 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月

2年前比は1月の119.5%から、6月は96.9%、7月は98.8%、8月は101.7%と、2024年とほぼ同じ水準で動いている。2024年を下回る月が続くかどうかが、反動の深さを測る目安になる。

各社が毎月上旬に前月分の月次を公表する

注目点 2
学校向け端末の出荷を、家電量販店の販売と分けて見る
957千台 209千台 2024年 2025年 2026年

JEITAがGIGAスクール向けの増加で伸びたと説明したモバイルノートは、2025年6月に957千台と前年の3.5倍になった。2026年7月は209千台で、前年の49.5%。①出荷には学校向けの上乗せとその反動が含まれるため、③と分けて見る必要がある。

JEITAが毎月下旬に前月分の出荷実績を公表する

注目点 3
次の買い替えが来る時期
次は? 5年9か月 5年9か月 2014 XP終了 2020 Windows 7終了 GIGA第1期 2025 Windows 10終了 GIGA第2期

パソコンの買い替えを大きく動かしたXP・Windows 7・Windows 10のサポート終了は、2014年、2020年、2025年と、いずれも5年9か月の間隔だった。学校の端末も、主に2020年度に配られた第1期の端末が、2025年度を中心に更新期を迎えた。次のサポート終了や端末の更新の時期が、次に販売が伸びる時期に関わる。

Microsoftの発表や学校の端末更新の計画をもとに、時期を確かめていく

6. まとめ:反動はいつまで続くのか

視点(最新の月)前年同月比2年前比(2024年同月比)
③店頭 売上高(2026年8月・開示4社の単純平均)65.1%101.7%
②市場 販売額(2026年7月)88.9%99.9%
①出荷 金額(2026年7月)82.2%117.7%

Windows 10のサポート終了から、まもなく1年。家電量販店のパソコン売上は、前年同月比では大きく下がって見えるが、駆け込み前の2024年並みを保っている。出荷を台数と金額に分けると、2026年7月は台数が2024年の81.9%まで減った一方、平均単価が143.8%に上がっている。台数の落ち込みを、平均単価の上昇が補っている。これから迎える2026年9〜10月は、駆け込みで最も伸びた月と比べるため、2024年並みでも前年同月比は46.9%、48.7%の計算になる(③)。前年同月比が売上の実力をそのまま表すのは、比較対象の前年の数字が落ち着く2027年2月以降である。

過去2回は、サポート終了のあと販売額が2年(XP)と4年(Windows 7)減り続けた。これを目安にすると、反動が続くのは2027〜2029年ごろまでが一つの見当になる。一方で今回は、個人向けのESUが2027年10月12日まで延び、平均単価も上がっている。買い替えは2027年にも続き、落ち込みは過去2回よりなだらかになる可能性がある。

反動の深さを測る物差しは、前年同月比ではなく「2024年の水準を保てているか」である。この物差しで見れば、駆け込みの反動が続くなかでも、家電量販店のパソコン売上は、いまのところ駆け込み前の水準を守っている。

注記と出所

  • 比べ方:前年同月比と2年前比は、断りがない限り金額(①出荷金額・②販売額・③売上高)。2年前比は2024年の同じ月を100%とした水準で、③は各社の2年分の前年同月比を掛けて4社で単純平均した。
  • ②市場:経済産業省「商業動態統計」家電大型専門店の情報家電(パソコン・タブレット・ゲーム機本体と、プリンタなどの周辺機器)。2026年7月は速報。年計は暦年で、商品分類は2021年1月分から細かくなっている。
  • ①出荷:JEITA「パーソナルコンピュータ国内出荷実績」。法人・学校向けを含む。2024年3月はページの表が別の月だったため、概況文の数字を使った。
  • ③店頭:ケーズHD・エディオン・コジマ・Joshinのパソコン品種の月次(前年同月比の単純平均で、売上規模は反映しない)。ビックカメラとヤマダHDはパソコン単体を開示していない。
  • 出所:Microsoft「製品のライフサイクル」(XPWindows 7Windows 10)、Windows 10 個人向けESU財務省 消費税率の引上げ、文部科学省(GIGAスクール構想 2020年令和5年度補正予算全国一斉臨時休業)、総務省 特別定額給付金JEITA 2025年6月の概況任天堂 Nintendo Switch 2、各社の有価証券報告書(ケーズHD・ビックカメラ・ヤマダHD)