投稿日:2026年9月10日

2026年7月の家電市場レポート

エアコンは出荷より店頭が伸び、パソコンは出荷台数が半分になった

2026年7月の家電市場レポート

エアコンは出荷より店頭が伸び、パソコンは出荷台数が半分になった

2026年7月の家電市場レポート

エアコンは出荷より店頭が伸び、パソコンは出荷台数が半分になった

2026年7月の家電量販市場は4,770億円、前年同月比110.4%だった。押し上げたのはエアコンである。ただしこの伸びには続きがなさそうだ。メーカーの出荷の伸び(118.8%)より、店で売れた分の伸び(市場133.8%、上場6社の店頭145.8%)のほうが大きく、流通にあった在庫が取り崩されたとみられるからだ。実際、8月のエアコンは開示4社の単純平均で95.6%と前年を下回った(各社の売上規模を反映しない参考値)。パソコンは金額こそ80%前後を保っているが、メーカーの出荷台数は半減した。

この記事は、経済産業省が2026年8月31日に公表した「商業動態統計」(2026年7月分・家電大型専門店)をもとに、JEITA・JEMAの出荷統計と、上場している家電量販6社の月次売上を突き合わせて独自に分析したものである。

2026年7月の家電量販市場

全国2,643店の家電量販店で、その月にお客様へ販売した金額の合計。消費税とインターネット通販の売上を含む。上場企業の決算を合算した数字とは対象範囲が違う。

販売額
4,770億円
前年同月は4,320億円
前年同月比
110.4%
前月(6月)は93.1%
集計対象の店舗数
2,643
前年同月の2,645店から2店の減少

家電量販は、同じ量販店の他業態より2〜5倍大きく振れている

2026年1〜7月の前年同月比(単位:%、数字は家電量販の値)

家電量販(太い実線) ドラッグストア(点線) ホームセンター(破線)
80% 90% 100% 110% 120% 130% 140% 109.6 102.9 104.4 112.1 127.5 93.1 110.4 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
赤い線が前年同月比100%。1〜7月の振れ幅(最大と最小の差)は家電量販34.4ポイント、ホームセンター16.0ポイント、ドラッグストア6.7ポイント。家電は5月127.5%、6月93.1%、7月110.4%と大きく上下するが、同じ量販店でも他の2業態はここまで振れない。家電は数年に一度の買い替えなので、制度や天候で買う時期が前後にずれると数字が大きく動く。

品目別の前年同月比

品目の名前は統計上の分類で、商品名そのものではない(エアコンは「季節家電」、パソコンは「情報家電」に入る)。対応は次の「商品の動き」で示す。

バーは前年同月比。表を縦に貫く線が100%(前年と同じ水準)、スケールは70〜140%。前年を上回った品目は青、下回った品目は赤。合計の行だけ濃い青にしている。出所:経済産業省「商業動態統計」速報。原典は百万円、億円は弊社換算。
品目前年同月比販売額
合計 110.4% 4,770億円
AV家電 102.6% 450億円
情報家電 88.9% 709億円
情報家電本体(パソコンなど)情報家電の内訳 78.8% 359億円
通信家電 126.5% 433億円
カメラ類 115.7% 135億円
生活家電 117.1% 2,475億円
季節家電(エアコンなど)生活家電の内訳 133.8% 1,169億円
その他 111.1% 569億円
70% 85 100 115 130
結果

6品目のうち前年を下回ったのは情報家電(88.9%)だけ。生活家電のうちエアコンを含む季節家電が1,169億円・133.8%で、単月販売額の24.5%を占めた。

当社分析

総額110.4%は「市場が10%伸びた月」に見えるが、増えた449億円の中身は偏っている。季節家電が296億円(66%)、通信家電が91億円(20%)で、この2品目だけで86%を占める。一方でパソコンを含む情報家電本体は96億円減った。残る品目の増加はいずれも20億円前後にとどまる。エアコンとスマートフォンという、天候と通信料金の制度に左右される2商材が総額をつくった月であり、家電の需要が全体として10%底上げされた月ではない。

2026年7月の商品の動き

同じ商品でも、メーカーが供給した量と、店で売れた量は一致しない。その差からモノの流れが読み取れる。

この表の読み方

出荷
メーカーが流通に供給した分
JEITA・JEMA の出荷統計(JEMAは販社出荷ベース)
市場
全国2,643店の家電量販店が、お客様に販売した分
経済産業省「商業動態統計」
店頭
②のうち、上場6社の店舗が販売した分
家電量販各社のIR月次速報

なぜ3つを並べるのか。①より②の伸びが大きい月は、メーカーが供給した分の増え方より、店で売れた分の増え方が速かったということだ。倉庫や店の在庫が薄くなっているとみられる。逆なら在庫が積み上がっている可能性がある。1つの統計だけを見ていても分からない、モノの流れの向きが読み取れる。②と③の差は、上場各社が市場の平均よりよく売れたかどうかの目安になる(③は各社の規模を反映しない単純平均)。ただし①は全チャネル向けの出荷、②は家電量販店の小売だけなので、両者の差には「量販店の取り分が増えた」効果も混じる。在庫の増減は有力な解釈のひとつであって、断定はできない。

評価は②市場の数字に対する7段階判定である。

絶好調 120%以上 好調 105%以上 やや好調 102%以上 横ばい 98%以上 やや不調 95%以上 不調 80%以上 絶不調 80%未満
バーは前年同月比。バーの途中にある短い縦線が100%(前年と同じ水準)、スケールはすべて40〜160%。大きい数字は3つとも金額ベースの前年同月比。出荷の下に台数を添えた品目は、金額と台数で動きが違う。バーの色は①出荷がいちばん薄く、③店頭に向かって濃くなる。①出荷はJEMA・JEITA(金額)、②市場は経済産業省「商業動態統計」、③店頭は家電量販各社のうち開示している社の単純平均(弊社算出)。3つの統計は集計対象も計上の基準も異なるため、水準そのものではなく、どちらが大きいかを見るために並べている。評価は②市場の値に対する7段階判定。
商品評価① 出荷金額② 市場金額③ 店頭金額当社分析
エアコン 絶好調 118.8%台数では 114.1% 133.8%分類「季節家電」 145.8%開示4社の単純平均 出荷の伸びより店頭の伸びが大きい。メーカーが供給した分より店で売れた分が多かったことになり、流通にあった在庫が取り崩されたとみられる。前の月は逆で、6月も出荷は2桁増だったが市場は83.8%だった。6月に積み上がった在庫が7月に動いた、という2ヶ月の流れとして読める。在庫が薄くなれば、翌月の店頭は出荷の水準に近づいていくと考えられる。8月のエアコンは開示4社の単純平均で95.6%と前年を下回った。ただし内訳は割れており、ケーズHD 89.4%・コジマ 83.9%が大きく落とす一方、エディオン107.7%・Joshin 101.5%は前年を保っている。反動は全社一律ではない。
パソコン 絶不調 82.2%台数では 56.1% 78.8%分類「情報家電本体」 79.8%開示4社の単純平均 金額では3つとも80%前後で揃うのに、メーカーの出荷台数だけが半減した。1台あたりの単価は金額82.2%÷台数56.1%で前年の1.47倍に上がっており、供給が減少したのは低価格ゾーンの機種である。前年の同月は、Windows 10のサポート終了(2025年10月14日)に向けた買い替えが立ち上がっていた時期にあたる。量販各社のパソコンは2025年8月に170%前後、9月には220〜290%まで伸びており、比較の基準そのものが高い。台数の落ち込みが金額よりはるかに深いのは、法人・教育向けの低単価機がメーカー出荷統計に含まれるためとみられる。ただし市場78.8%・店頭79.8%は、量販店にとって実額で約20%の減少である。台数の半減がそのまま量販店の売上減を意味しないだけで、痛手がないわけではない。
テレビ 横ばい 97.8%台数では 95.4% 100.7%分類「ビジュアル家電」 103.7%開示4社の単純平均 サイズ別では30〜39型103.4%と60型以上105.1%が伸び、売場の主力である40〜49型が82.9%と大きく落ちた。29型以下も88.3%、50〜59型99.8%で、伸びたのは小型帯の一部と大型だけである。有機ELは44.1%と半分以下になった。ただし4K対応の構成比は前年の60.3%から52.3%へ下がっており(4K対応173千台・82.7%/薄型テレビ計331千台・95.4%)、単純な高価格帯シフトとは読めない。安い帯と大型が残り、中間が抜け落ちた形で、売場の面積配分に直結する変化だ。
冷蔵庫 やや好調 103.6%台数では 98.0% 103.7%分類「調理家電」 101.0%開示4社の単純平均 台数は減って金額は増えた。401L以上の大型が台数で115.8%と伸び、1台あたりの単価は10.12万円から10.70万円(105.7%)へ上がっている。なお②市場の103.7%は冷蔵庫単独ではなく「調理家電」全体で、電子レンジ101.5%・炊飯器104.9%・食洗機116.7%を含む。この分類は品目間の差が小さく、冷蔵庫の動向への影響は軽微とみられる。
洗濯機 やや好調 98.3%台数では 100.4% 104.6%分類「家事家電」 107.3%開示4社の単純平均 出荷は金額が6ヶ月連続のマイナス。台数100.4%に対し金額98.3%で、1台あたりの単価は9.27万円から9.08万円(97.9%)へ下がった。台数を戻すために単価を落としている形で、増収がそのまま増益になりにくい品目である。なお②市場(家事家電)104.6%・③店頭107.3%が出荷を上回る理由は、分類の混在では説明できない。同じ「家事家電」に入る掃除機は出荷98.5%・店頭86.9〜99.9%と洗濯機より弱く、合算すれば数字は下がる方向に働くからだ。量販チャネルへの集約か、流通在庫の取り崩しが起きているとみるほうが自然である。
携帯電話 絶好調 出荷統計なし 126.5%分類「通信家電」 130.5%開示2社の単純平均 前年から91億円増え、季節家電に次ぐ第2の押し上げ要因になった(総額の増加449億円の20%)。単月で大きく振れるエアコンやパソコンと違い、通信家電は1月から7月まで一度も110%を下回っていない(最低は3月の110.6%)。季節商材と違って反動の谷を作りにくく、今後の反動局面では下支えとして働く可能性がある。ただし③店頭は開示2社のみで、この2社は非家電・情報通信の比重が高く、6社を代表しない。

2026年7月の上場6社との比較

ここでの「市場全体」は、全国2,643店の家電量販店の合計である。非上場の企業も含まれる。上場6社はその一部にあたるので、6社の単純平均が市場全体を上回れば、6社はおおむね市場の平均よりよく売れたとみられる(ただし単純平均なので各社の規模は反映していない)。

市場全体と上場6社

バーの左端は100%(前年と同じ水準)。右にいくほど前年より伸びている。スケールは100〜120%。塗りのバーが実績、輪郭のバーと、表を縦に貫く線が基準の市場全体(全国2,643店の合計)110.4%。6社単純平均だけ濃い青にしている。上場6社はPOS受注ベース、市場全体は小売販売額ベースで、計上の基準が異なる。出所:家電量販各社のIR、経済産業省「商業動態統計」。
企業前年同月比
ケーズHD 115.8%
エディオン(全店) 115.6%
Joshin 114.9%
ヤマダHD(デンキ) 110.9%
ビックカメラ 108.5%
コジマ 106.8%
6社単純平均 112.1%
市場全体全国2,643店 110.4%
100% 105 110 115 120
結果

6社の単純平均は112.1%で、市場全体の110.4%を1.7ポイント上回った。市場を上回ったのはケーズHD・エディオン・Joshin・ヤマダHDの4社。

当社分析

6社の単純平均が市場を1.7ポイント上回ったのは、エアコンに需要が集中した月の特徴とみてよい。工事と在庫を確保できる規模ほど需要を取り切りやすいためで、季節家電が191.6%まで伸びた5月は+7.3ポイント、83.8%に落ちた6月は逆に1.9ポイント下回っている。ただし6社はPOS受注ベース(工事待ちを含む)、市場は小売販売額ベースなので、需要期に6社が先に立つのは計上基準の差でも説明できる

一方、6社のなかの順位は開示データでは説明できない。各社が出しているのは品目別の前年同月比だけで、その品目が売上に占める比重は公表されていないためだ。実際、エアコンの伸びが開示4社で最も高いJoshin(154.9%)は全体3位、首位のケーズHD(138.8%)はエアコンでは3番目。エアコンとパソコンの差で並べても順位は再現できない。

言えるのは両端だけである。コジマの最下位は、エアコン以外に前年を上回った品目が少ないため(開示7品目中3つ。テレビ95.2%・冷蔵庫94.7%・掃除機86.9%が足を引っ張った)。対するケーズHDは開示8品種のうち6品種がプラスと幅が広い。上位3社は0.9ポイント差で、優劣を語れる幅ではない。

ビックカメラは型が違う。4カテゴリすべてがプラスで特定の品目に寄らず、6月も6社で最も浅い下げ(97.0%)だった。非家電と情報通信の比重が高く、季節商材の波に引きずられにくい。振れの小ささは反動局面では強みになる。なお、エアコンの来店増が単価の大きい商材に広がった形跡はない。エディオンのリフォームは、エアコンが218.2%だった5月も109.6%、7月は102.8%にとどまる。

次回(2026年8月の市場)の注目ポイント

2026年8月の市場の数字は、2026年9月末に公表される。次号はその数字を扱う。

焦点は季節家電(エアコンなど)が前年を割るかどうかだ。8月のエアコンは開示4社の単純平均で95.6%と前年を下回り、6社の月次売上の単純平均も100.4%と7月の112.1%から11.7ポイント下がった。7月に在庫が取り崩されたとみられること、前年8月の季節家電が98.4%と低い水準だったにもかかわらず今年の店頭が伸びていないことを踏まえると、8月の季節家電は7月から大きく水準を下げるとみている。

パソコンは前年のハードルが上がる。2025年は8月130.9%、9月163.5%、10月171.7%と推移しており、比較の基準そのものが高い月が続く。台数と金額の開きがいつ縮まるかも見どころだ。

注記と出所

注記

  • 本レポートの「家電量販市場」は、経済産業省「商業動態統計」の家電大型専門店を指す。売場面積500平方メートル以上の店舗を10店舗以上持つ企業が対象で、全国2,643店。販売額には消費税とインターネット通販の売上を含む。上場企業の決算を合算した数字とは対象範囲が違う。
  • 統計上の品目名は商品名そのものではない。エアコンは「季節家電」(扇風機・除湿機・空気清浄機・換気扇を含む)、冷蔵庫は「調理家電」(電子レンジ・炊飯器などを含む)、洗濯機は「家事家電」(掃除機などを含む)、パソコンは「情報家電本体」(タブレット・家庭用ゲーム機本体を含む)、携帯電話は「通信家電」に含まれる。
  • 店頭は家電量販各社のうち開示している社の単純平均(弊社算出)。エアコン・パソコン・テレビ・冷蔵庫は4社、携帯電話は2社。洗濯機はJoshinが「洗濯機・クリーナー」の合算開示のため、その値を含めた4社の単純平均。
  • 本記事の「平均」は、すべて各社の前年同月比の単純平均である。各社の売上規模による重み付け(加重平均)はしていない。各社が品目別の売上金額を開示しておらず、重みを正確に置けないためである。規模の大きい企業の動きは実態より小さく、小さい企業の動きは大きく反映される点に注意が必要である。
  • 上場6社の月次売上はPOS受注ベース(レジで受注した時点で計上し、工事待ちの分も含む)。実際の販売額や通期の業績とは一致しない。市場(商業動態統計)は小売販売額ベースで、計上の基準が異なる。
  • 7段階評価は市場の値に対する判定。上場6社の単純平均に対して判定する月次速報レポートとは、同じ品目でも評価が食い違うことがある。今月は6品目のうち3つが食い違う(テレビ:市場100.7%=横ばい/店頭103.7%=やや好調、冷蔵庫:103.7%=やや好調/101.0%=横ばい、洗濯機:104.6%=やや好調/107.3%=好調)。

出所

株式会社クロス / 家電量販店の市場規模・品目別販売額の推移 家電量販企業月次速報