7社の売上高合計は過去最高の6兆5,662億円 - ただし中身は明暗が分かれる

2025年度の主要家電量販7社の売上合計は6兆5,662億円と、前年比106.2%で過去最高を更新しました。全社が前年比プラスを確保した点は明るい材料ですが、収益面では7社合計の経常利益が2,492億円と前年(2,537億円)から約46億円減少しています。売上は増えたのに利益が減少した主な理由については以下でご説明します。

なお、本記事で取り上げているデータの詳細グラフは、弊社「家電データベース」の主要家電量販企業の決算比較ページにてご覧いただけます。

※注釈:ビックカメラの2025年度売上高(1兆220億円)は会社予想を仮置きした数値であり、実績は2025年10月頃に公表される予定です。また、ヨドバシカメラの売上高(8,815億円)・経常利益(688億円)は株式会社クロスによる推測値です。

注目トピック:ノジマの躍進 - 家電量販店からの大きな脱皮

1年で1,300億円増、2026年度は1兆円、そして製造業へ

今年度の決算で注目すべきはノジマです。売上高は前年の8,534億円から9,828億円へと約1,300億円も増加(前年比115.2%)し、7社中最大の成長を記録しました。その主な原動力はVAIOの連結子会社化など、積極的なM&A戦略です。2026年度の会社業績予想は売上高1兆円を見込んでおり、実現すれば7社の中でヤマダHDに次いでビックカメラと2番手を争う規模に躍り出ることになります。

さらに踏み込んだ動きがあります。ノジマは次期(2027年3月期)に向けて、日立グループの家電事業(日立グローバルライフソリューションズ)の持分80.1%を約1,100億円で買収しました。日立GLSといえば、冷蔵庫・洗濯機・エアコンなどの白物家電を製造・販売する国内の大手メーカーです。

これは単なる「規模拡大」ではありません。これまで家電を「売る側」だったノジマが、家電を「作る側」にも踏み込むという、業界の常識を覆す戦略転換です。小売と製造を一体で持つことで、仕入れコストの削減や商品企画力の強化など、他の量販店にはない競争優位を築こうとしています。この買収によって売上規模はさらに大幅に拡大する見込みで、家電流通業界の勢力図が塗り替わる可能性があります。

ノジマの家電量販企業としての数字

ここで一点、注意が必要です。ノジマの売上高9,828億円のうち、私たちがイメージする「家電量販店(デジタル家電専門店セグメント)」の売上高は3,399億円で、全体の約35%程度にとどまります。残りはキャリアショップ(約40%)やVAIO等のプロダクト・海外事業などで構成されています。※以下はノジマの決算説明資料

つまりノジマはすでに、「家電量販店」という枠を大きく超えた複合企業へと変貌しており、日立GLS買収後はさらにその性格が強まります。同じ「家電量販上位7社」として並べて比較することが、今後は難しくなっていくかもしれません。

ヤマダHDの「戦略的在庫処分」- 280億円の利益消失の背景

業界最大手のヤマダHDは、売上高こそ前年比103.9%の1兆6,918億円と増収を確保しましたが、経常利益は前年の480億円から200億円へと、約280億円もの大幅な減益となりました。

その理由は、ヤマダHDは今期、約240億円規模の戦略的な在庫処分を実施したことが原因です。長年積み上がった不良在庫・低回転在庫を一気に損失計上し、財務体質を抜本的にリセットしたのです。

これは、「将来への先行投資」として捉えるのが適切です。売上高経常利益率は前年の2.9%から1.2%へと低下しましたが、思い切って在庫処分をしたことによって来期以降の収益率は回復に向かうと予想されます。2026年度のヤマダHDの収益回復ペースが、業界全体の動向を占う大きな注目点です。

その他各社の状況

ケーズHDは売上高7,577億円(前年比102.7%)、経常利益306億円と前年比47億円の増益。郊外ロードサイド型の安定感が光ります。エディオンも経常利益266億円で着実に改善しました。

Joshinは阪神タイガース優勝セールの影響が大きく売上高4,366億円(前年比108.3%)と好調でした。経常利益も51億円に伸びましたが利益率の改善が引き続きの課題です。

グラフから「見えない」3つの洞察

① 「家電量販店」という業態の定義が変わりつつある

ノジマの事例が象徴するように、売上高ランキングの単純な比較が難しくなってきています。各社がキャリアショップ、リフォーム、保険、EC、海外事業、そして製造業まで取り込み始めており、同じ「家電量販7社」として並べても、中身はまったく異なるビジネスになってきています。

② 店舗数の減少は「縮小」ではなく「選択と集中」

7社合計の店舗数は2022年度の2,690店をピークに2,649店へと緩やかに減少しています。しかしこれは業界の縮小ではなく、不採算・小規模店を閉じながら残した店舗の生産性を高める動きです。店舗数よりも「1店舗あたりの売上・利益」に着目すると、業界の実力は着実に向上しています。

③ ヤマダHD以外の6社は、着実に利益を積み上げ

7社合計の経常利益が前年割れしたのは、ほぼヤマダHD1社が戦略的に240億円規模の在庫圧縮をした影響です。ヤマダHDを除く6社は着実に利益を積み上げており、業界全体の地力は落ちていません。在庫処分が一巡した来期には業界合計の経常利益は大幅に改善される可能性が高く、今期のヤマダHDの決断が、来期の業界全体の「回復感」を演出することになります。

まとめ

2025年度の家電量販業界は、全社増収で売上高を向上させながらも、各社の戦略の違いが収益力に明確な差となって表れた年でした。ヤマダHDは大規模な体質改善で来期への布石を打ち、ノジマはM&Aで急速に規模を拡大。「家電を売る」だけではない多角化の波が、業界全体に広がっています。2026年度以降、各社がそれぞれの戦略をどう実らせるのか引き続き注目していきます。

スタッフ

株式会社クロス スタッフ

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